iDeCoの掛金を、上限から最低額に下げることにした。控除の枠を越えると気づいて計算したら、決め手は家族のNISAだった

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私は、50代になってからiDeCoに入り、毎月23,000円(企業年金の無い会社員の上限)を掛けてきました。来年からは、これを最低額の5,000円に下げます。

iDeCoの記事の多くは「上限まで掛けよう」と勧めます。私も最初はそのつもりでした。考えが変わったきっかけと、計算し直して分かったことを書きます。

私の場合、入口の節税が小さかった

iDeCoの掛金は、全額が所得から差し引かれます。どれだけ税金が減るかは、所得税の税率で決まります。

所得税の税率 掛金に対して減る税金(住民税10%を含む) 月23,000円の場合(年)
5% 約15% 約4.2万円
10% 約20% 約5.6万円
20% 約30% 約8.4万円

私は障害者控除・医療費控除・扶養控除などがあり、所得税の税率が低くなっています。自作のExcelで計算して、入口の節税が思ったより小さいことに気づきました。

気づいたこと: このままだと、受け取るときの控除の枠を越える

iDeCoを一時金で受け取ると、退職金と同じ「退職所得控除」を使えます。枠は、掛金を出した年数(加入者期間)が20年までなら1年につき40万円です。

ここ数年は相場が良く、残高が順調に増えました。Excelで5%で増え続けると置いてみると、23,000円のまま掛け続ければ、受け取るときに枠を越えることが分かりました。

モデル世帯(51歳で加入、70歳まで掛けて70歳で一時金、利回り5%。条件は最後に書きました)で計算すると、次のようになります。

掛け方 70歳の残高 控除の枠 一時金に掛かる税
23,000円のまま70歳まで 864万円 760万円(19年) 約8万円
61歳から5,000円に下げる 620万円 760万円(19年) 0円
61歳で掛金を止める 552万円 400万円(10年) 約12万円

計算し直すと、越えること自体の損は小さかった

ここで少し意外な結果が出ました。104万円越えても、税は約8万円です。枠を越えた分は、半分にしてから税が掛かるためです。

一方、61〜70歳に差額(月18,000円)を掛け続ければ、9年間で約29万円の税金が減ります(所得税5%の場合)。iDeCoの税金だけで比べると、23,000円のまま掛けたほうが得でした。

「枠を越えるから下げる」は、それだけでは理由として弱かったのです。それでも私が最低額に下げる理由は、ほかに2つあります。

理由1: 退職金と、控除の枠を分け合う

私の勤め先には退職金の規定があり、iDeCoの一時金を受け取った後に、退職金も受け取ることになりそうです。

iDeCoの一時金を受け取った後、9年以内に退職金を受け取ると、iDeCoの加入者期間と重なる勤続期間は、退職金の控除の枠から差し引かれます。この期間は2025年までは4年でしたが、2026年1月から9年に延びました。70歳でiDeCo、75歳で退職金という受け取り方なら、以前は別々に枠を使えましたが、今は重なりが調整されます。

ただし、先に受け取ったiDeCoの一時金が枠に届いていなければ、重なる期間は「一時金の額 ÷ 40万円」年として数えます(国税庁 No.2732)。iDeCoを枠の内側に収めれば、使わなかった枠を退職金で使えるわけです。

モデル世帯(勤続26年、75歳で退職金)で、退職金に掛かる税を比べると、次のようになります。

退職金の額 23,000円のまま(退職金の控除 460万円) 5,000円に下げる(同 620万円)
300万円 0円 0円
600万円 約11万円 0円
900万円 約35万円 約21万円

一時金と退職金の税を合わせると、下げたほうが8万〜21万円少なくなります。それでも、入口の節税29万円にはわずかに届きません。

理由2: 暦年贈与で、家族のNISAに回す

決め手になったのは、浮いたお金の使い道です。

私は家族への暦年贈与を続けています。贈与したお金は、家族がそれぞれ自分のNISAで長く運用できます。NISAの枠は1人ごとにあるので、家族全体で見ると、非課税で長く運用できる額が大きくなります。贈与した分は私の財産から外れるので、相続税も減ります。

ところが、iDeCoに入れたお金は、受け取るまで引き出せません。私の場合、暦年贈与を続けると、70歳頃に手元の現金が尽きる計算でした。iDeCoの掛金を減らせば、その分を毎年の贈与に回せます。70歳で一時金を受け取れば、尽きる頃の現金の補いにもなります。

モデル世帯では、差額は9年間で約194万円です。これを贈与に回すと、相続税の税率が10%なら約19万円、20%なら約39万円、相続税が減ります。そのうえ、贈与されたお金は家族のNISAで非課税のまま増えていきます。

暦年贈与の注意点

  • 贈与税が掛からないのは、受け取る人1人につき年110万円までです
  • 亡くなる前7年以内(2024年以降の贈与から、3年から順に延びています)に、相続で財産を受け取る人へした贈与は、相続財産に足し戻されます。延びた4年分は、合計100万円まで足し戻しません
  • 受け取った人が自分で口座を管理していないと、贈与ではなく「名義預金」として相続財産とみなされることがあります。贈与契約書を残し、受け取った人が自分で使える状態にしておくのが基本です
  • 毎年同じ時期に同じ額を渡す約束をしていたとみなされると、全体を一度に贈与したもの(定期贈与)として贈与税が掛かることがあります
  • 個別の判断は、税理士や税務署にご相談ください

「止める」ではなく「最低額」にする理由

掛金を止めて運用だけを続ける「運用指図者」になると、その期間は加入者期間に数えません。上の表のように、61歳で止めると控除の枠は400万円で止まり、かえって税が掛かります。

月5,000円でも掛け続ければ、枠は1年40万円ずつ伸びます。最低額は、少ない掛金で枠を伸ばし続ける方法です。

70歳まで掛けられるのは、老齢基礎年金を受け取っていないから

2026年12月から、iDeCoに入れる年齢が65歳未満から70歳未満に広がります。ただし65歳以降に掛けるには、老齢基礎年金(やiDeCoの年金・一時金)を受け取っていないことが条件になっています。

私は70歳まで障害年金を受け取る予定で、その間は老齢基礎年金を受け取りません。そのため70歳まで掛けられます(この選択の理由は、障害年金の記事に書きました)。65歳から老齢年金を受け取る人は、65歳で掛金が止まり、控除の枠もそこで止まります。

条件の細部には経過措置などもあります。65歳以降も掛けるつもりの人は、加入先の金融機関に確かめてください。

私の結論

最初は「枠を越えるから下げる」と考えていました。計算し直すと、越えること自体の損は小さく、iDeCoの税金だけなら掛け続けたほうが得でした。

それでも下げることにしたのは、暦年贈与で家族のNISAに回し、家族全体で非課税の長期投資の額を大きくするほうが効果が大きいと気づいたからです。iDeCoは「自分ひとりの節税」の道具ですが、資産を家族で引き継ぐことまで考えると、別の答えになりました。

自分の場合を比べるには

ライフプランシミュレーターで、次のように入れると比べられます。

  1. 資産に「iDeCo」を足し、今の残高・これまでの加入年数・毎月の掛金・掛金を出し終える年齢を入れる。出口戦略で、一時金で受け取る割合と受け取る年齢を選ぶ
  2. 人物の給与収入のタブで「勤務先からの退職金がある」を選び、金額・受給年齢・勤続年数を入れる
  3. プランを複製し、片方の毎月の掛金を5,000円にする。全プラン比較と、結果の表の「資産取り崩し」の税で見比べる

iDeCoと退職金を近い時期に受け取る場合の控除の重なりも、ここで書いた決まりどおりに計算します。浮いたお金を家族に贈与する場合は、支出の「生前贈与(世帯外)」のタブに入れると、相続税への効果まで比べられます。

試算の条件

  • 51歳でiDeCoに加入(企業年金の無い会社員、月23,000円)。61歳から掛け方を変え、70歳まで掛けて70歳で一時金として受け取る
  • 利回りは毎年5%(掛金は毎月、計算は年ごとの近似)
  • 入口の節税は、所得税5%(復興特別所得税を含む)・住民税10%で計算
  • 勤め先の退職金は勤続26年(49〜75歳)、75歳で受け取る
  • 税金は2026年の制度で計算

試算の結果は目安です。税金の個別の判断は、税理士や税務署にご相談ください。